ピグマリオン保育の実践

「ピグマリオン保育」とは・・

子どもの潜在力・可能性を信じて肯定的に育めば、必ずや子どもは大きく成長され、社会に役に立つ有能感あふれたすばらしい人間になります。だからと言って、我がままを許すということではなく、善悪の区別だけはきちんと守れる人間に教育することは言うまでもありませんが、その上に立って、子どもを否定することなく、真正面から愛し、信じて成長を見守っていけば、子どもの潜在力は大きく飛躍的に向上していくという実践に基づく考え方です。(米国心理学者ローゼンサールが実証し、命名されました)

1.ピグマリオン保育について

保育者が、大らかに子どもらの善き可能性を信じ、それを引き出し伸ばすことに心を注ぐ保育をピグマリオン保育という。
保育実践の場では、それに加えて、対象者の向上心に灯をともすために深層心理技法を、意図的・積極的に活用し、相手の防衛をはずし、相手の力を使ってこちらの求めているように相手を変える保育方法をピグマリオン保育と呼ぶ。

2.ピグマリオン保育の基盤になっている考え方

当保育所は、1人1人に合わせた保育、全職員による全園児を援助する保育、インシデント報告による保育士間の心のキャッチボール成立保育を基本としている。

  1. 自分(人)は、存在しているという、そのことに人知を越えた大きな意味があると考えている。
  2. 自分(あなた)は、大切で、掛け替えのない生命体であり、ひとつの生命体として、核になる部分とおまけになる部分で構成されて存在していると考えている。
  3. 生命体として、命のセンサーとして働く三つの力(感じる力、見抜く力、表す力)が、年齢、性別、人種、能力等の違いにかかわらず、核となっていると仮定する。
  4. 行動は、図1の構造が環境に対して起こす、生命維持のための反応の形のひとつひとつであると考えている。
  5. 人は、各々、長所、短所を一緒に沢山持っているものであると仮定し、ピグマリオン保育で、なぜ、子ども達がよくなってゆくのか、ピグマリオン効果について図2のように考えている。

心のかたちがこんなときには、こんなことが起こります。





一人ひとりのこどもについて、私たちはこのように捉え、能力から内側の部分は全受容し、行動については社会生活に適応できるかたちに変える指導をすることが保育士の大切な役割であることを確かめ合っている。

職員会において当所の基本理念、ピグマリオン保育の基盤を再確認する。
また、担任として、一人ひとりの子どもとの信頼関係の構築を図るため、一人ひとりを完全受容することの確認をするとともに担任のみが抱え込むことのないように全園児を全職員が保育するという開所来のオープン保育、TT方式(ティームティーチング)の基本についても常々確認をしている。

  1. 暴れる、暴言を吐くなどの興奮状態の時(図3の場合)
    ・背中を撫で、落ち着くのを待つ(スキンシップ+ピグマリオン保育法・・・澄んだ穏やかな心を取り戻す。)
    ・「○○ちゃんはいい子。○○ちゃんが大好きだよ。」と抱きしめて語り掛ける。子どもが落ち着いて話を聞けるようになるまで繰り返す。(スキンシップ+プラスのストローク+ピグマリオン保育法)

  2. 落ち着きを取り戻してから
    ・問題の行動について子ども自信が振り返って考えられるように話をする。
    子どもにはどんな理由があったとしても、その『表し方』はしてはいけないことであると教える。
    ・正しい感情処理の仕方を子どもと共に考える。暴れたい気持ちを我慢し、押し殺す方向では指導せず、社会的に受け入れられるストレス解消法の学びの機会にする。


3歳児の箱庭

ピグマリオン保育について上の図4のA.B.Cの関わりについて理解のための職員会を行う。
一人ひとりの子どもを全職員で見守ろうと約束し、保育室・園庭・広場を問わず、死角についての確認をその都度している。
Tの立場でもUの立場でも、ピグマリオン保育を学ぶことによって保育場面での迷いや混乱が消えて保育士一人ひとりの輝く個性が自由保育の本質にせまる活動になってきている。

人生の最も重要な人格形成の初期を預かる保育の場で、保育士に対してはピグマリオン教育法、園児に対してはピグマリオン保育を実践し、所長が保育士の可能性を信じることは、保育士自身の保育に対する意欲と自信につながり、保育士が園児の可能性を信じることは園児自身が、自信と向上の意欲を持つことが実証されている。

ピグマリオン理念を基盤として、信じること、信じられることの相乗効果を保育に展開しただけである。ピグマリオン教育法・ピグマリオン保育法は子ども・保育士そして管理職の立場としてのお互いの人格と尊厳を冒さないで心の教育、心の保育の目的を達成することのできるスキルである。

子どもも保育士も人の『行動』として表面に出たものは『良い行動』と『良くない行動』がある。これは、行動の支えになっている能力がマイナスに使われたかプラスに使われたかの違いだけである。その責任を追及するのではなく、失敗の裏にある能力をプラスに使える指導や助言ができるようにピグマリオン教育法、ピグマリオン保育法を実践している。

 


E-mail:okazaki-genki@nifty.com